仮面ライダー第19、23話のロケ地北海道へ検証に赴いた初回が2009年だった。その時点では特定に至っていない場所も複数あったが、その後に解析が進み再訪したのが6年後の2015年。それから6年たった去年、やっと未特定だった場所を見つけるも折しものコロナ禍で再訪が叶わずやっと今回現地に行く事が叶ったのでその報告を。
2011年に開催された仮面ライダー40周年イベントに登壇された助監督梅田味伸氏の所有していたご自身の使用台本に書き込まれたメモが当時の撮影状況を知る上で多くの情報をもたらした事は拙ブログでも何度か書いてきた。公式でも講談社「仮面ライダー1971~1984」にて検証が試みられており、2Pに渡り北海道ロケ編の記載もあった。そこには掲載されていなかったがこの道内のロケ地について「自衛隊」「羊ヶ丘」という地名が書かれていたのだ。私はこのうちの「羊ヶ丘」というのを23話における大隈博士の液体燃料実験シーン、バイク戦の原野と考えていた(結果的にはそこから誤読だったが)。羊ヶ丘は羊ヶ丘展望園としてその眺望から当時も北海道の観光名所の一つだったが(クラーク博士像の設置は1976年)、敷地は元々農林省北海道農業試験場の一部を観光用に解放した場所だった為、23話のあのような場所が存在するのではないかと考えたからだ。19話に登場するFBIの神田がアジトとして使っていた牧場の牛舎もその周囲にあったのではないかとも考えた。「自衛隊」の記述も羊ヶ丘の最寄りに陸上自衛隊真駒内駐屯地がある事から羊ヶ丘周辺で自衛隊の管理地だった場所を使用した可能性を考え、国土地理院のサイトで該当箇所周辺の70年代の航空写真から一致する場所を探し続けていた。
それが一転したのが昨年の秋だった。ネットニュースを見ている時にふと目に止まった陸上自衛隊の戦車射撃競技会の記事。演習の為に恵庭の原野に切り開かれた広大な荒地に砲撃の火を吹く迷彩色に塗られた戦車群。目に止まったのはそれら迫力ある戦車ではなくその周辺の様子と遠方に連なる稜線。「自衛隊」の敷地にこの稜線はもしかして…早速23話の該当シーンのそれと比べると見事に一致するではないか!
とはいえ、東富士演習場の検証でも泣かされたが当時はともかく現在では自衛隊の演習場ともなると立ち入れる機会はほぼ無い。周囲からなんとか現地を臨める場所が無いかストリートビューなどで確認するも敷地内どころかその先の稜線を拝む場所すら見つからない。順に捜索範囲を広げてやっと2km(!)ほど南側の少し丘になった辺りで見通せる場所にアタリをつけて本日やっと現地行く事が出来た。
ストリートビューで見た時のイメージとは季節の違いもあって周囲の森の状況で見通しが十分でないのと、前日までの台風の影響による低い雲に覆われ稜線も一部隠れてしまったが劇中画像と合わせてみた。台本書き込みの「自衛隊」の文字と映像とほぼ一致する稜線だけが傍証ではあるが恐らくこの演習場で間違いないと思われるが如何だろうか。また、次の記事で補足するがこの見通せる場所を探している時にこの演習場直近で先述の神田のアジトロケ地の牧場も発見した事もこの推察の補強となり得るのではないかと考える。
火星ロケットに使用するために大隈研究所が開発した新型燃料の実験を北海道の原野で行う大隈博士とその助手
このシーンでは起伏の少ない低山の稜線しか映らない為、恐らく演習場から北西側にある北広山が映っていると考えられる。
液体燃料を巡ってショッカーバイク部隊との攻防戦が広げられる北海道の原野
この一連のシーンでは地形に起伏があるせいか地平線しか見えない方向(大半が南側方向)といくつかの山並みが確認出来る方向が確認出来る。
今回訪れた見通しが効く場所も演習場敷地内と大差が無い原野と牧場用に開墾された平坦な場所なので劇中シーンと大差無い筈だが一部育った森と低い雲に隠されてしまっているが一番高くなっている辺り(下の対比カットでライダーの右側)が支笏湖の西側にある紋別岳だろう。
ライダーの機転でサイクロン号の旋回に吹き飛ばされるムササビードル
この辺りの雲が厚く、ムササビードル右側の三角の山は少し遠方のせいか生憎対比写真ではほぼ見えなかった。
すんでのところでライダーに翻弄され臍を噬むムササビードル
最後のカットは稜線が映る一連のカットでも一番南側の山を捉えている。ムササビードルの左側に薄ら見えているのが樽前山だと思われる。
記事中で触れたが第19話FBIの神田のアジトロケ地牧場にも取材したので次回記事で紹介したいと思う。また、演習場での様子は検索すると色々画像も見られるが以下のニュース映像では上記で解説した稜線がはっきり確認出来るとともにどのような場所で撮影されたかがよくわかるのではないだろうか。
出典:仮面ライダー 第23話「空飛ぶ怪人ムササビードル」毎日放送/東映 1971年9月4日放送